2022.12.14
コロナ禍で進む富裕層の二極化
新型コロナ感染症の流行は、経済を含む社会全体に大きな影響を与え、仕事のオンライン化、生活様式の変化、系外活動の縮小など生活に大きな変化をもたらした。一方、富裕層の増加は続いており、新型コロナウイルス流行語も衰えを見せていない。しかし、コロナ禍では、富裕層の中でも意識面の変化が起き、仕事や消費、資産管理などで二極化が進んでいるという。コロナ禍で進む富裕層の変化について、日本そして世界の状況をご紹介する。

続く富裕層の増加
民間企業の推計によると、1019年日本における純金融資産保有1憶円を超える「富裕層」は132.7万世帯に達し、調査を始めた2000年以降で過去最大となった。総資産額の合計は333兆円に及ぶ。2009年からの10年間で人口は84.5万人から133万人の約1.6倍、総資産額は195兆円から333兆円の約1.7倍へと増加した。特に2013年以降は一貫して上昇を続けている。要因は金融資産の運用、資産価格の上昇などが考えられる。2020年においても株価は上昇を続けているが、コロナ禍においては経済への影響も余談を許さない状況である。
富裕層に起こりつつある意識の変化
社会の先行きが不透明な中、富裕層には事業活動・生活意識で意識の変化がみられることが分かった。民間企業が2020年10月~11月、企業を経営する富裕層に行ったアンケートでは、自宅のリフォームや家具の購入(29%)、インターネットショッピングの利用が増えた(41%)、フードデリバリー・ケータリングの増加(21%)など消費活動を活発化させる意見がある一方で、高額な商品やサービスの利用を控えるようになった(39%)という意見もみられた。
事業面においても、新たな販路や取引先の開拓(50%)、デジタル化・IT活用の加速(61%)といった積極的な意見のほか、コスト削減(62%)、事業ポートフォリオの見直し(42%)といった慎重な意見も上位を占めている。また、少数意見では、事業継承の件等(33%)、事業の縮小や売却の検討(12%)といった回答もみられる。富裕層の意識の「攻め」と「守り」の二極化や、今後の方向性に迷いが生じていることも推測できる。
また、同じ調査の中では、個人の資産管理や運用面についての調査も行っている。回答では「経済の先行きや管理・運用する資産に関して、積極的に勉強をするようになった」(47%)といった意見のほか、「資産の管理・運用に関するアドバイスをしてもらえる信頼できる専門家が必要だと思った」(42%)などの意見もみられた。個々が直面する事業や生活への影響は違うかもしれないが、情報を精査し慎重に判断したいという意識があらわれている。

世界の富裕層の意識の変化
目を世界の富裕層に向けてみると、違った価値観がみえてくる。大手銀行が2020年5月世界の富裕層投資家に実施した調査によると、「新型コロナによって、何が最も大切かあらためて評価し直した」(79%)と自らの状況を内省する点は変わらない。違うのは、「世界により良い変化をもたらしたい」(68%)、「何か大きなものに関わりたい」(40%)など人生に新たな目的を見出した、という回答がみられることだ。
「新型コロナ危機を受けて、サステナブル投資により強い関心を持つようになった」(59%)「寄付を増やす予定だ」(51%)など、多くの投資家は他者との繋がりを強めつつコロナのパンデミックにより失われた時を取り戻したいと考えていることが分かる。
経済産業省は2020年通商白書の中でコロナショックと世界の現状を踏まえた上で、今後の方向性として、「国際強調をベースとしつつ、危機に柔軟に対応でき、持続可能な発展を可能とする強靱な経済社会システムの構築が必要」としている。
個々の置かれている状況や事業・生活への影響は違う、それは富裕層においても同様だ。富裕層に現れた意識の二極化は、現在の社会の問題の多様化の一端をあらわしていると言えよう。他者との繋がりを持ち、持続可能な社会に力を貸していくことが、個々が抱える問題解決への一番の近道かもしれない。
転載元:Qualitas(クオリタス)
EXT& EDIT BY KANAKO IZUMO