2022.04.21

コロナ禍で広がる四十肩五十肩 

地元京都を拠点に、50年以上にわたり整形外科医療を提供している京都下鴨病院。森大祐理事は、「コロナ禍での外出を控えや在宅勤務で、幅広い年齢に四十肩五十肩が広がっている」と警鐘を鳴らす。

日常生活に支障が出る前に

京都下鴨病院は、整形外科疾患全般に対応し、地域に根差した医療を提供しています。私自身は肩関節が専門で、耳なじみがある四十肩五十肩などの治療を行っています。痛みがあっても初期の頃は、多くの皆さんが「きっとそのうち治るだろう」と思い、すぐに病院に行かない人も多いと思います。

腰や膝の痛みは、横になって安静にしていると痛みが楽になる場合が多いのですが、四十肩五十肩などの肩関節疾患は、寝ているときも痛みが和らぐことがなく、夜中にも痛み、睡眠障害を引き起こすことがあります。服も着られない、高い棚に手を伸ばせないといった日常生活に支障が出るまで症状が進行してからようやく来院される方が多いのですが、痛みをそのままにしておくのはおすすめしません。

自分なりの運動で悪化も

整形外科の患者数はこれまで、1番は腰痛、2番が膝痛、3番が肩痛で、腰、膝に比べては肩ははるかに少なかったのですが、ここ最近は肩痛の患者数が腰や膝の患者数に迫っています。

私が医者になりたての頃は、四十肩五十肩に悩まされるのは、50代以上でした。しかしここ最近は、四十肩五十肩のの約半数が47歳の私よりも年下で低年齢化が進んでいます。このコロナ禍で患者数は日に日に増えています。スマホで同じ姿勢で見続けていたり、テレワークでパソコン業務が続いていたりして運動不足になり、基礎体力が落ちている方が多いのも原因です。

痛みを感じるのに、テレビやYouTube、本などで紹介されているストレッチや自重運動を、自分なりに行っていても、なかなか良くならず、さらに悪化してから来院する人が多くみられます。これは、運動不足やケガで筋肉やじん帯が硬くなり、関節可動域の制限がある状態で、できない動きを見よう見まねで無理にしてしまうため、症状が悪化したものと考えられます。

患者がどの程度自分の体を動かしてよいものか判断がつかないのは当然のことだと思います。「この運動は今の段階ではしない方がいい」という助言を受けられるのが、病院で診察を受けるメリットです。痛みを感じたら早めに医師の指導の下で、的確な治療を始めることが大切です。

手術という選択肢も

症状が進み、通常の治療が難しくなった場合は、肩関節鏡や肩人工関節などの外科手術で改善しますので相談をしてほしい。当院で行っているリバース型人工肩関節置換術は、人工関節が既に入っていてもう治療の手立てがないと、他の病院で言われた方にも有効な場合があります。こうした幅広い治療選択肢があるのが当院の大きな特徴です。

院では治療にあたり、治療実績に基づいたデータを提示して治療期間がどれくらいかかるかをお伝えすることを大切にしています。また手術を受けるか迷われたら、当院で同じ手術を受けた方に承諾のうえ、手術の体験談をしてもらい、患者が納得してもらい、安心して、治療を受けられるように努めています。

治療終了時に実施している治療満足度アンケート調査では、手術の満足度は10段階評価で平均8以上で、誇りに思っています。

医療法人順和会 京都下鴨病院

医師/理事

1974年、京都府生まれ。関西医科大学卒業後、京都大学整形外科に入局。関連病院を経て、船橋整形外科に肩関節鏡手術の習得を主な目的に国内留学、米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を主な目的に留学。2014年9月から京都下鴨病院で肩関節外来を担当。日本整形外科学会認定整形外科専門医。

https://www.shimogamo.jp