2022.04.18
グルテンフリーと日本の食文化を融合
東京・西麻布に2021年11月に誕生したレストラン「ロべリスク。」は、新進気鋭の山崎史雄総料理長による焼き鳥とフレンチを融合させたコース料理が楽しめるだけでなく、全ての料理が、小麦に含まれるタンパク質のグルテンが含まれず、白砂糖も不使用ということで注目を集めている。グルテンフリー料理に挑む山崎シェフの思いを聞いた。

オールグルテンフリーのレストラン
「ロべリスク。」では、数百年続く和の技法、備長炭で焼く「焼き鳥」という文化とフレンチの技法を掛け合わせたコース料理を、300種類を越えるワインとのペアリングで楽しめます。
全ての料理をグルテンフリー、かつ白砂糖不使用で調理して提供しており、小麦アレルギーやセリアック病などの小麦の成分で具合が悪くなるグルテン不耐症の方はもちろん、カロリーは高いが栄養はほとんど含まれない「エンプティカロリー」の白砂糖を避けている方にも安心して食べていただけます。
それぞれが外食では違う料理を食べてきた家族でも、当店では同じ料理を一緒に楽しんでもらえます。また、健康・美容意識の高い方にも、当店の料理はきっとご満足いただけることと思います。お客様に驚きと感動体験を与える料理と空間を用意し、ずっと良い思い出として残していただけるよう、日々努めています。

お客様の涙がきっかけ
これまで私はグルテンフリーの料理人として、さまざまな場所で研鑽・修行を積んできましたが、実は、私がグルテンフリーの料理を追求するきっかけとなった忘れられない出来事があります。
10年ほど前、当時働いていたレストランで、お客様から「セリアック病の娘のためにグルテンフリーのコースを作ってほしい」と注文がありました。当時はグルテンフリーの料理への理解が、料理人の間でも進んでいなかったため、そのお客様は、グルテンフリーに知識があるというシェフのいる店にも、「サラダやしらす丼なら大丈夫」と言われ、そんなメニューでは子供が楽しめないから、外食はあきらめていたというのです。
私自身もグルテンフリーの知識がありませんでしたが、「娘の誕生日くらいは、おいしい料理を食べさせたい。娘のために作ってくれませんか?」という言葉を受けて、前菜からデザートまでのコース料理をグルテンフリーで作りました。緊張しながらお客様に出していくと、デザートの前くらいに、店長から「お客様のところに行った方がいいよ」と声をかけられました。すると、お客様がボロボロ泣きながら私の顔を見て、「娘が『お腹いっぱい、もう食べられない』と言った。外食でこんなことを言うのは初めてです」と、私と肩を組んでくれて、「あなたのおかげです。ありがとう。私自身も、グルテンフリーの食事だと気が付かないほどおいしかった」と感謝してもらえました。
そのときから、「これは自分がやった方がいい仕事だ」と思い、グルテンフリーの料理を研究し始めました。

期待に応え続ける料理を追求
それから研究を重ね、肉についても知識をさらに深く得たいと思い、銀座の会員制肉料理店で修行させてもらいました。また、約4年前から、クボタ アグリソリューション事業部や熊本玄米研究所とお付き合いして、レストランの料理長として入らせてもらう中で、ミネラルやカルシウムなどの栄養素が豊富で、グルテンフリーでもある日本古来の食材と日本の繊細な技法を生かした料理や商品の開発をしました。
日本の古き良き食文化に今の技法を取り入れれば、新しくて栄養素が高く、体にも心にもおいしいグルテンフリーの料理が提供できます。これまで得てきた知識や経験が全て「ロべリスク。」の料理に結実されています。
セリアック病の方、グルテンフリーの料理しか食べられない方は世界にも大勢いるはずです。そうした方々が、大切な人と同じメニューを安心して食べられるように、これからは世界に向けて「ロべリスク。」と、古来からグルテンフリーである日本の食材のすごさや強みを発信していきたいと思います。
光栄な事に私を応援してくれる方が大勢います。その期待に応え、満足させ続けて、初めて新しいお客様にも満足いただける料理がお出しできると考えています。
「お客様が自分の子供だとしたら、何を食べさせてあげたいだろうか」と考えながら、これまで料理を続けてきました。お客様の心と体を大切に思いながら、これからも料理の道を追求していきます。
有限会社エスケイ・コーポレーション
「ロべリスク。」総料理長
山崎史雄
1983年、広島県出身。数多くの店舗立上げやメニュー開発に従事し、「恵比寿ikra」「松濤GENMAIGENKIDO」などの総料理長の経験を経て、2021年、「ロべリスク。」総料理長就任。グルテンフリー料理人として「日本の食の力を世界へ」をテーマに掲げて活動している。
https://lobelisk.tokyo/