2022.05.24

どこにいっても改善できなかった痛みに取り組む

腰や膝などに不調を抱える人たちへ、酒井和彦院長が考案した「理学整体」で施術を行っている酒井健康院。の気持ちのよさや一時的な苦痛の軽減ではなく、根本的な改善を追求する酒井院長の技を求め、岐阜の本院と東京の出張所には、全国から多くの患者が足を運んでいる。開業42年、自身を「職人」といいつつ、いまだ「志半ば」と語る酒井院長に思いを聞いた。

従来の治療に納得できずに理学整体を考案

酒井健康院では、腰痛や膝痛など体に現れた症状にとらわれるのではなく、「体の形や動きの壊れ方」を調べて施術を行っています。私が考案した理学整体では体の不調の原因は全て体の形や動きを作る「筋肉の異常」にあると考えています。

例えば一口にぎっくり腰といっても、前にかがむときに痛い人と、体を起こすときに痛い人がいます。また寝返りなどで体をひねるときに痛い人もいます。これは腰の「筋肉」が引っ張られたときに痛いのか、縮めて使ったときにいたいのか、あるいは体をひねるときに使う筋肉を伸びたり縮んだりさせたときにいたいのかという違いがあります。このように腰や膝に現れている「症状」というのは、筋肉の「伸縮の異常」によるものです。

以前、私は鍼灸マッサージ師として神経内科のある病院に勤めていたことがあります。そのとき患者さんに「楽になった」と言われても、自分で行った治療でありながら、どの部位をどう治した結果にどうなったのか一切納得ができませんでした。鍼(はり)を打てば患者は楽にはなるけど根本的な治療にはなっていないと感じていました。腰痛や膝痛といった症状が現れている「体」は、一体どのように「壊れている結果」、その症状が現れているのか、それを見極めて改善させるのが、治療師としての喜びであり、職人としての達成感です。マッサージのように気持ちがいいだけではいけませんし、その場しのぎの痛み止めを処方するのも違います。このように自分が納得のいく方法を突き詰めた結果、理学整体を考案するに至りました。

日本で一番助けられる治療師に

私の目が見えなくなったのは29歳の時です。幼い頃から目の異常には自覚がありました。夜目が利かなかったり視野が狭かったり、学生のときは剣道やサッカーで不自由を感じていました。同級生には散々笑われ「どうして自分がこんな思いをしなければいけないんだ」と、悔しくてなりませんでした。

中学1年のときに、近所の人から「母が私の目のことを気にして泣いていた」と聞かされて、「将来、いつ目が見えなくなっても絶対に泣くような生き方だけはしない」と決意しました。目が見えないことで泣いたり卑屈になったりすれば両親を責めることになるからです。視力はどんどん落ちていき、メガネでも矯正ができず、その上に夜盲、視野狭窄があるというやっかいな病気です。いずれ目が見えなくなるということは覚悟していました。

どこの病院に行っても病名がつかなかったのですが、高校1年のときにようやく両眼網膜色素変性症と診断されました。将来的に失明すると宣告されたとき、私には選択肢がなかったというのが、この療術業の世界に来たきっかけです。でも、むしろ目が悪くなったことでこの業界に入れてよかったと思えるほどです。


たとえ消極的な選択だったとしても、どうせやるなら体の不調に悩む人を、日本で一番助けられる治療師になろうと思いました。目が見えないのは不利でしかありませんが、人一倍努力すればいいと考えました。その結果、どこに行っても治らなかったと悩む多くの患者さんたちの役に立てていることに心から喜びを感じます。

全国どこでも理学整体を

一番初めに訪れるのが私の健康院という方は、まずいません。整形外科や接骨院などを何軒も巡り、それでも改善できなかった方が最後に来ます。年配の方が多く、何時間もかけて来る方ばかりです。施術費用よりも交通費のほうが高いくらいですので、もっと訪れやすい場所で、理学整体の施術を受けてほしいと常々思っています。

理学整体をもっと多くの人に知ってもらいたいと考えて、定期的に理学整体の研修会を開催しております。私一人で施術できる人数は限られていますが、全国津々浦々に理学整体師が 育っていけば、もっと多くの体の不調に悩む人たちに喜んでもらうことができるはずです。

70歳になりましたが、まだ理学整体を広めきれていないので、志は半ばです。「どこへ行っても体の不調が改善しない」とか、「手術を宣告されたり、手術しても改善しなかった」という方の役に立つためにも後進の育成を頑張りたいと思います。

酒井健康院

院長

1951年、岐阜県出身。鍼灸・マッサージ師の資格を取得後、各地で整体・カイロプラクティックなど各種手技療法を学び、1985年、岐阜県各務原市で酒井健康院を開院。1998年3月に「日本理学整体学会」を設立。現在、会長兼総師範として、毎月東京・名古屋・大阪での研修会を行い、その施術法の普及と後進の育成に力を注いでいる。

http://www.sakai-kenkouin.com/