2022.04.19

あえてビジネスとして LGBTQ+の市場価値を創造

LGBTQ+当事者がありのままの自分を生きながら活躍できる場を広げ、新たな交流の場の立ち上げに尽力しているreleys。多様性を重視する社会の創造のために、LGBTQ+当事者たちだけではなく行政や企業、地域からも大きな期待が寄せられている。小山優生代表取締役は、自身もLGBTQ+当事者として思い悩んだ経験から、自分と同じような思いをする人々の助けとなるよう創業したという小山代表取締役に、その思いを聞いた。

LGBTQ+をアピールできる武器に

弊社はLGBTQ+に特化したサービスをさまざまな角度から展開するスタートアップ企業です。これまでLGBTQ+は、時として世間から”いじり”の対象だったり、守ってあげないといけない人たちや、気軽に踏み込んではいけない領域という扱いを受けてきました。今後はLGBTQ+の当事者であることが、その人の個性の一つであり、多様な人であふれる社会の中でアピールできる強い武器にするため、当事者がありのままの自分で活躍できる場を開拓し、新たな交流の場を立ち上げ、さらにLGBTQ+を個性の一つとしてポジティブにとらえられる社会を築くために創業しました。

事業は、当事者コミュニティー事業と、インフルエンサー事業、行政や企業と協働するわたがしプロジェクト(わたプロ)が主な三つの柱です。これまで、LGBTQ+に関する領域はボランティアやNPO法人が扱う、いわゆる慈善事業の領域として見なされ、区分されてきた経緯があります。しかし私たちはあえて、ビジネスとしてLGBTQ+の領域を扱うことで、安定したサービスの提供を可能にし、LGBTQ+に対する認知度と地位の確立、そして新たな市場価値の創出を目指しています。

ロールモデルとコミュニティーをつくる

どんなLGBTQ+当事者も共通して苦しんでいることがあります。それは、「同じセクシュアリティーの人と出会う難しさ」と「身近に当事者として生活しているロールモデルとなる大人がいない」ことです。

特にゲイの世界では、マッチングアプリやSNSからの出会いが主流となっており、何も知らない若者が性被害に遭い、傷ついてしまうことも少なくありません。また、既存の交流会は会議室のような場所に集まって話をする少し硬いイメージのものが多く、若い当事者はなかなか参加しづらい現状があります。そのため、私たちは「友達から始める安心安全に出会える場の提供」を目的として、京都、東京、福岡を拠点に当事者コミュニティー事業を行なっています。

インフルエンサー事業では、現在30人ほどの事務所所属者がおり、その一人一人がさまざまなセクシュアリティーの当事者です。あえて当事者であることを公表できる人のみで事務所を構成することで、LGBTQ+界のアイコンとなる存在を輩出し、当事者が活躍できる環境を開拓していきます。さらに、自分らしく生きる姿やリアルな日常を発信することで、LGBTQ+の生き方として一つのロールモデルを提案し、ファンの方々が自身の未来にたくさんの選択肢を思い描けるお手伝いをします。

わたプロは、地方自治体や地方企業、当事者団体と協力して、LGBTQ+の啓発や職場環境改善などのコンサルティングを行い、LGBTQ+当事者が暮らしやすいまちづくりを目的とした大規模プロジェクトです。私自身地方で育った経験もあり、これまでサービスが届かなかった地方に住む若者が、ありのまま生きていける環境をつくりたいと考えています。

日本最大級のLGBTQ+プラットフォームに

私は6歳で自身のセクシュアリティーを自認し、孤独や将来に対する不安とともに生きてきました。2020年10月11日、両親にカミングアウトしたことをきっかけに、私と同じ苦しみを抱えて生きる若者を減らしたいという思いから起業へと至りました。

両親へのカミングアウト、そして起業の決断は、良くも悪くもLGBTQ+当事者であると明らかにして、これからの人生を生きていくことを意味します。LGBTQ+がおかしいものではないと頭では分かっていても、カミングアウトすれば、家族と疎遠になるかもしれないし、活動を始めれば批判の的になるかもしれません。当時、未成年だった私にはとても重い決断でした。しかし自分を信じて行動し、乗り越えた今、もう怖いものはありません。家族という最大の味方と、これからの社会を築いていくreleysという組織が、今の私にはあるのです。

私はLGBTQ+当事者であることを個性の一つとして武器にしました。だからこそ出会えた人がいて、見ることができた景色があります。

これからかなえたい目標は、日本で同性婚を実現すること、そしてLGBTQ+当事者であることを理由に自ら命を絶ってしまう人をゼロにすることです。そのためにreleysを多くの方に活用していただき、日本最大級のLGBTQ+プラットフォームにしていきたいと考えています。

私たちは、私たちが信じる軸をぶらさずに、目の前のやるべきことを一つずつ達成していきます。

株式会社releys

代表取締役

2001年生まれ、熊本県出身。6歳の時、ゲイ寄りバイセクシュアルであることを自認。近畿大学在学中の2020年10月11日に両親にカミングアウト。2021年、株式会社releys設立を設立。男性同両性愛コミュニティー「オムライス」と女性同両性愛コミュニティー「ナポリタン」を開設し、LGBTQ+の地方の若者がありのまま生きているまちづくりを目指す「わたがしプロジェクト」を発足。

https://releys.jp/