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「鼻うがい習慣の定着で、鼻のトラブルや感染症のリスク低減を」ニールメッド•唐木佑介代表取締役社長
システムインテグレーションや医療機器の販売で卓越した営業成績を収め、現在、アメリカの医薬品メーカーであるNeilMed® Pharmaceuticals,INC.の日本法人で代表取締役社長を務める唐木佑介。多くの企業から手腕を買われスカウトされる営業の極意と、現在経営するニールメッドの主力商品である鼻うがいキット、そしてまだ日本には定着していない鼻うがいの大切さについて、話をうかがった。

ニールメッド 唐木佑介代表取締役社長
未開拓のエリアをターゲットに愚直な努力を重ねる
私は父のアメリカ駐在に伴って渡米し、青春時代をアメリカで過ごしました。大学では芸術系の大学で粘土彫刻を専攻しましたが、芸術ですぐに食べていけるわけではありません。そこで卒業後は食品コンサルタントの会社に就職し、勤務しながらアート作品の制作を続けたいと考えていました。しかし仕事をするうちにビジネスの面白さに目覚め、アメリカの商習慣とは異なる日本のサービス業を学びたいと考えて、日本への帰国を決めました。
帰国すると、まず大塚商会に入社しました。入社直後は、同社が取り扱うOA機器をはじめとする商品や各種サービスに関する分厚いカタログを抱えてのローラー作戦での飛び込み営業で鍛えられました。この時代に、毎日通い続け件数をこなすという、愚直な努力の大切さを学びました。その後システムインテグレーションの営業部門に配属されると、2005年当時電子化が進んでいなかった医療業界にターゲットを絞り、営業攻勢をかけました。当時は、大きな病院でこそ電子カルテなどITの導入が進みつつありましたが、中小の医療機関では、カルテも診療報酬の計算も、紙で行っているケースがほとんどでした。そこにニーズを見出したのです。
営業実績を評価されたことから、仕事の工夫とその成果を競う社内コンペティションに参加し、「最優秀賞を獲得した暁には医療部門を立ちあげたい」と大風呂敷を広げたところ、最優秀賞を受賞するとともに、本当に医療部門の立ち上げを任されることになりました。任されたといっても、まずは販促スタッフと二人三脚でスタートし、少しずつ人が増えていくという形で、私が営業の先頭に立って、販売実績を上げていきました。ちなみ私は社長となった現在もお客さまを担当し、生の声を聞くことを大切にしています。これが、ニーズを掴むことや社員へのアドバイスに役立ちます。その後スカウトされて、アメリカの総合電機メーカーであるGEの日本の医療部門で、CTやMRIなどの営業を担当しました。世界的メーカーという、新しいチャレンジの場を求めての転職でした。

ニールメッド 唐木佑介代表取締役社長
鼻の奥の副鼻腔まで、多量の生理食塩水でゆっくり洗浄
ニールメッドは、アメリカのNeilMed® Pharmaceuticalsによって2014年に設立された、日本法人です。私は2016年にやはりスカウトによって代表取締役社長に就任し、日本での販路拡大を任されました。当社の主力商品は、「サイナス・リンス」という鼻うがいのキットです。洗浄ボトルのキャップの形状が意匠登録されており、大きさや、丸形、縦長などどんな形の鼻の穴にもぴったりフィットするようになっていて、片方の鼻の穴に押し当てて柔らかいボトルを握ると、生理食塩水が鼻の奥まで入って洗浄するというものです。
「サイナス・リンス」の他の鼻うがい製品との違いは、洗浄液で勢いよく鼻の入り口近辺を洗うのではなく、鼻の穴をしっかり密閉し、240mlというたっぷりの生理食塩水で、副鼻腔という、頬骨や眉間の辺りにある鼻の奥の部位までゆっくり洗浄することができる点です。蓄膿症の方であれば、副鼻腔に溜まった膿を洗い流すことができます。初めて使うと、副鼻腔に詰まっていたゴミのようなものが出ることもあります。
また、外出から帰ったらうがいをする方は多いと思います。うがいで洗浄できるのはのどの中咽頭という部分で、上咽頭を洗浄することはできません。上咽頭は数日間ウイルスや細菌が潜伏している部位で、新型コロナウイルスのPCR検査で鼻から綿棒を入れて検体を採取する箇所です。上咽頭は、外から侵入したウイルスや細菌、花粉、大気汚染物質といった異物から体を守ってくれるとともに、免疫力が低下していると、ここから異物が体内に侵入してしまう部位でもあります。したがって上咽頭を洗浄することは、新型コロナウイルスや風邪などに感染するリスクを低減につながります。
私自身、アレルギー性鼻炎を患っており、「サイナス・リンス」を試してみて、その良さを実感しました。また、患者さん自身で鼻の奥まで洗えること、風邪などの予防につながること、花粉症や風邪にかかると頭がぼーっとしてやる気が出なかったりしますが、「サイナス・リンス」で鼻うがいをすることで症状が軽減することいったことから、多くの医療機関から推奨していただいています。医療機関の受付や売店に置いていただくほか、「サイナス・リンス」が置いてある薬局を紹介してくださる先生もいます。
鼻うがいは日本ではまだ馴染みがなく、日本での使用率は1%に満ちません。そうした中、自分が自信をもって奨められる商品を広める仕事に携われることに、やりがいと幸せを感じています。これからも「サイナス・リンス」の良さをより多くの方に知っていただき、鼻の疾患を抱えている方はもちろん、「花粉が飛ぶ季節だから、今日は空気の悪いところに行ったから、風邪予防に鼻うがいをしよう」というように、鼻うがい文化を日本に根付かせていきたいと思っています。

ニールメッドの主力商品である鼻うがいキット
■プロフィル
1980年、長野県出身。父親のアメリカ駐在に伴い、アメリカに移住し、アメリカの芸術系大学に進学。卒業後、アメリカの企業勤務の後帰国。大塚商会、GEヘルスケアジャパンを経て、2016年からニールメッド株式会社代表取締役社長に就任。
株式会社ニールメッド
https://www.neilmed.jp