2023.02.15

「予防歯科」で安定した歯科医院経営を

「健康な人が訪れる歯科医院」というコンセプトで、保険診療の中で行う予防歯科で全国屈指の実績を上げてきた医療法人社団しん治歯科医院。30年以上にわたって安定した経営を続けてきたその理論を、経営や人材育成などさまざまな悩みを抱える歯科医院に伝えている。高橋翔太事務長・COOに、歯科医院の抱える問題や改善策について聞いた。

予防歯科を歯科医院の欠かせない収益基盤に

歯科業界を専門としたビジネスコンサルティングをしてきましたが、歯科医院の院長は日々、「売上が頭打ちになってきた」「定期健診のリピート率が上がらない」「院長一人で頑張っている」などの悩みを抱えています。

こうした悩みを抱える歯科医院の多くは、治療を主体とした経営を行っています。もちろんそれも重要ですが、予防歯科をきちんと診療に取り入れて運用していくことができれば、歯科医院が抱える悩みの多くは解決できるようになります。

最近特に注目される機会の増えた予防歯科は、保険適用で診療を受けることができますが、以前は自費診療の扱いでした。保険適用がされるようになり、多くの歯科医院が予防歯科に取り組んでいますが、通常の歯の治療や歯列矯正ほど大きな収益の構成要素には成長していないのが現状です。

予防歯科は本来非常に収益性が高く、歯科医院の安定経営に欠かせないものです。ただ、制度をきちんと理解していなかったり、運用していくための環境を整える方法が分からなかったりして、歯科医院の多くは予防歯科を収益基盤として確立できないままでいます。

予防歯科を柱にした経営の方程式

父が1990年に創業した医療法人社団しん治歯科医院は、「健康な人が訪れる歯科医院」というコンセプトの下、現在の様な保険で行う予防歯科がきちんと整備される以前から予防を中心に据えて運営してきました。今では予防歯科だけでも患者様数は年間1万4000人に上り、リピート率は99%、これは保険診療をメインとした歯科医院の中では全国でもトップクラスに入る規模だと自負しています。

約20年前、知人の歯科医院が窮地に陥ったときに、我々の経営手法をアドバイスして、ごく短期間で経営が改善したことがそもそもの始まりでした。このビジネスモデルを「デンタルフィットネス」としてブランディングし、今では同じように悩みを抱える多くの歯科医院に導入しています。

ただ、保険診療を使った予防歯科のしくみはは、私たちが一から開発した仕組みというわけではありません。国が定めたルールを基に、歯科医院の立地条件や診療方針に関わらず、収益の改善、経営の安定のために最適化して経営手法として提供しているだけなのです。

歯科医院が国の定めたルールを自院に合うように取り入れ、幅広く患者に提供していくことができれば、保険適用がなされるように変更された現行制度の意義にかなうものなのですが、現実はそうではありません。歯科医院に対して保険を使った予防歯科をうまく運用していけるようにコンサルティングする私たちの仕事が成立している状況自体が、正直不自然なことであると思っています。

歯科業界の明るい未来を築くために

歯科医院が保険の制度を理解して、自らの力でアップデートしていってほしいというのが私たちの望みです。歯科医師としての技術は学校や現場で学びますが、どのように制度が変更され、どう運用していくかなど、経営に関することを学ぶ機会がこれまで設けられてこなかったのは、非常に問題であると思っています。

私たちが実現したいテーマの一つが、「歯科医院を会社にすること」です。旧態依然とした運営を続ける歯科医院に同システムを導入していただき、患者さんはもちろん、従業員の満足度も引き上げられる理想的な「会社組織」への変革をもたらし、ひいては歯科業界全体の底上げにつなげたいと思っています。

歯科医院は、「歯が痛くなったら行く場所」という認識がこれまであったと思います。それを「痛くなくても行くのが当たり前の場所」に変えて、患者さんが自発的に予防歯科に取り組んでいただく環境を作り上げられたら、地域の方の健康に対する大きな貢献となりますし、クリニックの安定経営にもつながって、その地域で長く存続する好循環が生み出されます。

歯科医院が自ら改革ができるようになるまで、サポートを続けていきます。

医療法人社団しん治歯科医院

事務長・COO

1982年生まれ、香川県出身。高知工科大学院卒業後、IT 企業、証券会社の勤務を経て、東京で広告代理店など複数の会社を起業。平成27年、父が開業したしん治歯科医院の事務長・COOに就任。

http://shinji-shika.jp/