2022.02.17
「イシャチョク」でオンライン診療の普及を目指す
「日本で一番忙しい小児科医」と称されている鈴木幹啓さんがCEOを務める「オンラインドクター.com」が提供するオンライン診療システム「イシャチョク」が2022年1月にスタートした。「オンライン診療は患者に多くの利便性があり、診療報酬点数のプラス改定により導入に積極的な医師が増える」と語る鈴木CEOにシステム開発への思いを聞いた。

医療機関の横断検索を可能にする
自らのクリニックを開院以来、土日も年末年始も休みなく診療を行い、患者ファーストを徹底して追求してきました。そんな私にとって、コロナ禍で高まったオンライン診療受診へのニーズは、ぜひともかなえたいものでした。そこで2021年7月、患者のオンライン診療受診サポートするポータルサイトを立ち上げました。
現在オンライン診療システムを提供するベンダーは10社以上あり、医療機関によって導入システムが異なるため、患者はそれぞれのアプリでしか医療機関を検索できず、オンライン診療を導入しているすべての医療機関を検索するために、それぞれのアプリをダウンロードしなければなりません。そこで、該当する医療機関の情報を患者に提供することで、それぞれの医療機関が導入しているアプリのダウンロードや予約ができるようにしました。それが「イシャチョク検索」です。

患者と医師双方に利する診療システム
しかし「イシャチョク検索」のリリースで満足したわけではありません。医療機関にもっとプラスになるような設計にすることで、医師側の意識を変え、さらに患者のニーズに応えるものにしたいと考えていました。患者が医療機関を探して受診する従来の「イシャチョク検索」は残しつつ、新たなソリューションとしてこの2022年1月にリリースしたのがオンライン診療システム「イシャチョク」です。
一番のポイントは、現在行っている対面診療はそのままに、オンライン診療で新規の患者をマッチングさせたことです。つまり、医療機関にとってプラスしかない設計にしたのです。まず患者が、位置情報を入力し、初診でもオンライン診療を受けることができるよう、ガイドラインに沿って自身の診療情報や健康情報も登録して、「イシャチョク」で受診を希望すると、30分圏内に放射状に位置する医療機関の中で、対応可能な医師がアクセスしてオンライン診療してくれるという仕組みです。
こうしたソリューションをラディアル(放射状)型オンライン診療と呼んでいて、登録した医師側は通常通り自分の医院で患者の対面診療を行いながら、空き時間ができた時にクラウドで受診を希望している患者にアクセスし、オンライン診療ができるようにしました。医師は対面診療がない時間も収益化でき、患者も受診を希望した時に、クラウドで待っていれば予約要らずで医師がアクセスしてくれる。まさに現場の医師でなければ思いつかないシステムだと思います。

オンライン診療の先進国を目指す
活用できるのは通常の受診だけではありません。例えば新型コロナの自宅療養者は、保健所や行政が関与してオンライン診療をしてくれる医療機関を仲介したものですが、「イシャチョク」にはどの医療機関も登録することが可能なので、仲介なしにオンライン診療を受けられるということです。そうした点では、コロナ後の医療提供にも変革を起こせると思っています。
日本は、オンライン診療について米英国、中国などに比べ一般への普及が進んでいないのが現状です。コロナ禍の2020年、米国では10億回ものオンライン診療が行われたといわれていますが、日本では比較になりません。日本はこの分野で大きく遅れをとっています。少しでも早く日本をオンライン診療の先進国に引き上げるために、「イシャチョク」は可能性を秘めたシステムだと確信しています。
医療においては、患者のニーズを徹底的に追求することが最も重要ですから、「イシャチョク」に登録する医療機関を増やして、診療を希望する患者に即対応できるようにしていきたいですね。
株式会社オンラインドクター.com
CEO
鈴木幹啓
1975年生まれ、三重県出身。2001年自治医科大学卒業。三重県立総合医療センターで研修後、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、公立紀南病院、伊勢赤十字病院などを経て、2010年、和歌山県新宮市で「すずきこどもクリニック」を開院。2020年、オンラインドクター.comを設立。
https://オンラインドクター.com/