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「より良い暮らしのエージェント」としての不動産業目指す ハッピーハウス真山英二代表取締役社長
コロナ禍で“おうち時間”が増え、買い替え需要により好況だった不動産業。激しい競争を繰り広げる中、横浜で不動産を総合的に扱う「ハッピーハウス」の真山英二社長は、不動産業は「より良い暮らしのエージェント」と語る。手数料ほしさに動くのではなく、顧客に真摯(しんし)に寄り添える人材を育て、業界のイメージアップも目指す真山代表取締役社長に、不動産業の現実と理想を聞いた。

ハッピーハウス 真山英二代表取締役社長
中立的な立場で提案するのが真のプロ
ハッピーハウスは1985年、義父が立ち上げました。横浜市旭区を対象に、土地・建物売買の仲介、賃貸の仲介・管理、不動産コンサルティング、さらに老人ホームの紹介も行っています。個人としては公益社団法人「全日本不動産協会 神奈川県本部」の理事として、不動産業者への指導、行政主催のセミナー講師なども務めています。
不動産業者の仕事は、コンサルティング業です。お客様が「不動産を売りたい」と相談すると、多くの業者は仲介手数料ほしさに「早く売りましょう」といいます。しかし、私は正しくないと思っています。私たち不動産業者は“暮らしのエージェント”です。その人のより良い暮らしを実現することがゴールであり、単に不動産の売り買いをすることがゴールではないのです。
お客様が「売却したい」といっても売らない方がいい場合もありますし、貸した方がいい場合もあります。お客様が「買いたい」といっても買わない方がいい場合もありますし、借りた方がいい場合もあります。そして、その時がベストタイミングではないこともあります。不動産にはいろいろな選択肢があるので、あくまで中立的な立場で提案していくべきです。本当に必要なことを提案できる業者こそが、真の不動産のプロだと思っています。
ハッピーハウスは、お客様の現状と理想をしっかりヒアリングすることを徹底しています。我々の仕事は“不動産”という商品・サービスを使って理想と現実のギャップを埋め、お客様の理想の暮らしを実現することです。今の悩みや不満、本当はどういう暮らしをしたいかしっかりと把握し、その方の状況や世の中の動きを総合的に判断し、一番いい形をご提案しています。今は最適な時期ではないと判断したら、「今は売らない方がいいですよ」などと正直にお伝えします。
老人ホームの紹介事業を始めたのは、私の祖母が老人ホームに居たときのエピソードがきっかけです。私が老人ホームの祖母を訪ねたとき、「怖い怖い、おっかない」しか言いませんでした。本当に悲しかった。そんな思いをする人を一人でも減らしたい。人生の最期こそきれいに楽しく暮らしてほしいと、この事業を始めました。当事業のいいところは、ご本人だけでなくご家族にも感謝されるところです。ご家族にも事前に会えるので、老人ホームの紹介だけでなく、その後の相続問題などもクリアすることができるのです。多くの知識が必要な上に長期間にわたることも多く、ある意味不動産仲介よりも大変ですが、かかわる方々が少しでも幸せになるよう尽力していきたいと思っています。

ハッピーハウス真山英二代表取締役社長
経営コンサルタントから転身
私は以前、外資系コンサルティング会社に勤めていました。経営コンサルタントとしてある程度の経験を積んだころ、義父が「ハッピーハウスを閉めたい」と言い出したのです。偶然にも、当時ブームだった書籍『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)のシリーズを読んで不動産の可能性に興味が湧いていました。また、経営コンサルをする中で経営の仕事にあこがれを抱いていたこともあり、「不動産と経営の組み合わせなら丁度いい。私がハッピーハウスをやろう」と思ったのです。
こうして、まずは営業スタッフとして入社したものの、不動産業界は未知の世界。何も分からない中、とにかく知識をつけることにまい進しました。その中で心掛けていたのは、分からないことはその道のプロに聞くことです。社内の人や知人の知識は間違えていることもありますし、法律や業法は改正が多いですから、税金のことなら税理士と税務署、登記のことなら司法書士や法務局と、それぞれ専門家に聞くようにしたのです。こうして常に正しい最新情報を得ることで、スピーディーに知識を習得していきました。
2008年に代表取締役に就任してからは、新たにウェブマーケティングの勉強を始めました。不動産業界は売り上げのほとんどを営業に頼っているので、そこにマーケティングの概念を入れることでお客様を増やし、営業の負荷を軽減しようと考えたのです。どんなに優秀な営業スタッフがいても、営業をかけるお客様がいなければ意味がありませんから、中小企業にとってマーケティングは必須です。ちなみに、弊社のホームページはほぼ私が作成し、マーケティングも自ら担当しています。
預かった物件をウェブに掲載する際は、ペルソナを設定して、その人に届けたいメッセージを記載しています。「日当たり良好」などの一般的なセールス文句だけではなく、ターゲットとする人々のベネフィットが明確に分かるページを作っているのです。その不動産のよさを吸い上げて分かりやすい形で届けていれば、価値を分かる人が買ってくれるので、価格競争に巻き込まれることがありません。もし値下げすることになっても、売主は「ここまでしっかり紹介してくれているなら、あとは価格の問題ね」と納得され、最終的な満足度も高いのです。

ハッピーハウス 真山英二代表取締役社長
正しい情報発信で業界のイメージアップを
近年のコロナ禍は、都心部の不動産業界にとってはプラスになりました。家で過ごす時間が増えたことから、住宅の需要が上がったのです。2020年の秋には弊社の周辺在庫はほぼ完売したくらい、スーパーバブルでした。昨年売れるだけ売れてしまったので、今は在庫がない状態です。
不動産業界、衣食住の「住」を支え、お客様のより良い暮らしを実現し、感謝される、とてもいい仕事だと思います。昔は悪徳業者もいましたが、時代と共に淘汰され、近年は圧倒的に優良業者が増えています。今の業界の情報をどんどん発信することでイメージアップを図り、「就職したい業界ランキング」の上位になるくらい、この業界で働きたい若者を増やしていきたいですね。
今後の目標は、マーケティングの手法や社員教育のノウハウをパッケージ化して不動産業者に販売することです。弊社で試して成功した手法を業界内に広め、一人一人の売上を最適化していきたい。これからも、お客様に真摯(しんし)に寄り添える人材を増やし続けることで、不動産業界をより良い世界にしていきたいと思います。
プロフィル
1973年横浜生まれ。慶應義塾大学理工学部の大学院を修了後、PwC(現IBM)に入社。経営コンサルタントを経て、2008年にハッピーハウス代表取締役に就任。全日本不動産協会神奈川県本部の理事で、教育研修委員長を歴任。テレビ・ラジオ出演多数。著書は丸善本店にて週間総合売上No1の実績を持つ。これまでに関わった不動産取引は1000件以上。現在も不動産の実務家ながら、不動産業者の教育も行う。不動産業者の先生と呼ばれる。
株式会社ハッピーハウス
http://www.j-mind.co.jp