2021.11.24

「すべては子供たちのために」コロナ禍も地域小児医療支える たけつな小児科クリニック・竹綱庸仁院長

新型コロナウィルスの感染拡大がさまざま日本の医療の課題を浮き彫りにする中、奈良県生駒市で小児医療に取り組んできた「たけつな小児科クリニック」の竹綱院長はPCR検査の導入や病児保育施設の開設、オンライン診療など次々と“先手”で対応している。「小児医療は未来を診ること」という竹綱院長に、地域の小児医療の展望を聞いた。

いつでも診てもらえるクリニックに

2013年に生駒市の二次医療機関で小児科の立ち上げに携わり、小児医療に従事してきました。生駒市のみならず、奈良県全般にも夜間や休日の小児外来や入院施設は限られており、小児医療環境が潤沢とは言い難い現状を見てきました。ならば地域小児医療の一端を担い、地域に貢献していこうと決意し、2017年「たけつな小児科クリニック」を開院しました。

開院当初から血液・脳波・レントゲンなど各種検査機器を導入し、軽度の救急にも対応できる設備を配備しました。私個人の信条「できない理由を探す前に、できる方法を考え、実行する」を原動力に、スタッフと思いを共有して推し進めました。

“いつでも診てもらえる”は当クリニックの強固な方針です。そのため、月~金曜日まで休診を設けず、また、待合室には絵本をたくさん並べて、いつでも子供たちが安心して来院できる環境を整えています。

先手を打って新型コロナに対応

2020年に入り、新型コロナウィルスの感染が拡大し、生駒市でも緊張状態が続きました。そんな中、8月にPCR検査機器を導入。「PCR検査をするクリニックには行きたくない」といった声もありましたが、「うちがやらなければ、どこがやるだ」といった覚悟で、先手を打って取り組んで蓄積したノウハウが、必ずこの地域の医療の糧となると信じて体制を早急に整えたのです。ここでも「できない理由を探す前に、できる方法を考え、実行する」が原動力でした。

また、一般外来以外には発達相談を受ける専門外来も設けています。元々小児神経の専門でもあり、関連する言語発達遅延の治療や支援も手がけていたため、開院以来継続して診察・治療を行ってきました。度重なる緊急事態宣言で施設に通えなくなった子供たちがいると聞き、受け皿を早急に作らなければならないという思いから、2021年には言語発達遅延のデイサービスも開始しています。言語聴覚士の専門的サポートを1対1で提供する当サービスは、言語聴覚士の訓練や指導に支援も手厚く、多くの方から支持いただけていると自負しています。

PCR検査機器の導入も言語発達遅延のデイサービスの開始も、新型コロナウィルス蔓延の渦中で先手を打った形となりました。瞬発力ある判断を促したものは、当クリニックの理念「すべては子供たちのために」です。子供の安心を守るにはご家族の安心を支えなければならない、家族の安心を支えるには地域医療を発展させなければならないという考えです。

気軽に来院して「安心」を受け取って

そうした理念と地続きに、2019年には共働きや介護のために病気の子供の自宅療養が困難な人の子供を預かる「病児保育室バンビ」を始めました。これまでの経験から、病児保育施設が多くのご家族を救うと思っていました。実際の運営は非常に難しく、超えるべき課題が山ほどあることも熟知していましたが、リスクを取ってでも「自分がやらなければならない事業」と腹をくくって開設しました。乳幼児にも安心な自然由来の素材を駆使し、療養だけでなく心も育める環境を整えています。このコロナ禍で、エッセンシャルワーカーを始めとした“休みたくとも休めない“方々の情報を見るにつけ、事業の意義を実感している所です。

2021年8月には新型コロナウィルスの医療提供体制で、自宅療養を基本とする方針が発表されました。治療が遅れて亡くなられる方がいる、家族に新型コロナウイルス感染者がいるため、生まれたばかりの新生児が受診できずに命を落としてしまうということが、日本で起きてしまったことに抑えようのない憤りを感じています。医師としてどうにか応戦したい思いから、既に次の先手に着手として、在宅酸素の確保と家庭に届けるチャネルを構築しました。そして、オンライン診療システムを2021年10月1日から開始し、患者が医療に繋がるルートを死守しています。

今後も医療現場は多忙を極めることが予測されます。ですが、保護者には「こんな軽い症状でクリニックに行くなんて……」と思わないでほしいと考えています。子供は、時間がたつほど重症化のリスクが高まります。少しでも心配であれば外来に来てほしい。それこそ“先生の顔を見に行こう“くらいの気軽さで来院して「安心」を受け取って欲しいと思います。

プロフィル
2006年愛知医科大学病院小児科入局。2013年生駒市の二次医療機関の小児科の立ち上げに携わり、感染症や食物アレルギーに気管支喘息などの一般的な小児科診療と、てんかんや小児頭痛などの専門的な検査と治療を行う。2017年「たけつな小児科クリニック」開院。2019年に「病児保育室バンビ」をスタートさせ、2021年には言語発達遅延のデイサービスやオンライン診療も開始。

たけつな小児科クリニック